パズル制作の裏側 第49話

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故事成語とテニヲハと…

 みなさんはどんな熟語がお好きでしょうか。どんな熟語が好きかは人によって、あるいは同じ人でも時によって違うと思います。ちなみにバレてるかもしれませんが、私は「地球外生命」なんかがお気に入り。もう少しあげるならば、どちらかというと、とにかく長い熟語が好みかもしれません。「天文学的数字」とか「未確認飛行物体」とか「桃栗三年柿八年」とか。ホワイトナンクロを担当するときは特に長い熟語をどこに配置するか、そういうことばかり考えているからかもしれません。

 改めてこうしてあげてみると、意味が深い熟語が好きという部分はある気がします。単一的でないというか、物語的要素を含んでいるというか。そういう意味では、四字熟語や故事成語は奥が深い。四字熟語は特にコンパクトであることも素晴らしいです。いちいち謂れがあるから、やはり深い。ただ四字熟語には現代日本ではあまり使用されていない漢字も多く含まれています。これは私たち漢字パズル作家からすると悲しい事態。「臥薪嘗胆」なんかはその典型です。「偕老同穴」「画竜点睛」「四面楚歌」「玉石混淆」なんかも「偕」「睛」「楚」「淆」はほぼ現代日本語では使用されませんから、注意しないとパズルには使えない(注意しながらパズル面に入れるのもひとつの楽しみではあるんですけどね。2文字を構成しないように、閉じるかたちで使用するしかないのですが)。ちなみに故事成語ではありませんが「一家団欒」の「欒」もほぼ使われない漢字です。

 2文字の故事成語にもよいものがそこそこあるのですが、残念ながらそれもなかなか漢字パズルでは使えません。「完璧」「杞憂」「矛盾」などがその代表格でしょうか。「圧巻」みたいな熟語はなんとか使用することできます。ですがそもそも2文字ではナンクロにおいては文字確定要素にならないため、そのハンデもある。ハンデという言葉が適切がどうかは置いといてですが。

 「疑心暗鬼」「酒池肉林」などはパズルにも使われることの多い四字熟語。おそらく多くの作家が重宝しています。いま調べて思ったんですが「鼓腹撃壌」なんかは工夫すれば使用できそう(今日はひとつよい発見をしました)。5文字になりますが「五十歩百歩」なども使いやすい故事成語のひとつです。

 故事成語には「三顧の礼」「他山の石」「烏合の衆」「漁夫の利」「塞翁が馬」のように平仮名を含んだかたちで日本語として定着したものもあります。これらはかな入りナンクロで目にすることもあるかもしれません。故事成語ではないですが、テニヲハ(助詞)を使ったものだと「濡れ手で粟」「青菜に塩」「気を付け」「物は相談」「時と場合」「嘘も方便」とか。「花より団子」なんかも楽しくて好きです、私は。

 さらにこれは余談というか、ナンクロにおいては無理というかハードルが高いのですが「くノ一」みたいな言葉も少ないですがあります。平仮名の「く」片仮名の「ノ」漢字の「一」で「女」。女忍者のことです。この言葉自体は比較的新しい創作(小説)から生まれたみたいですけれど、なかなかパンチというか頓智が効いてますよね。

 確か以前「好きな漢字はなんですか」というアンケートがあり、お便りコーナーで紹介されていたことがあったような気がします。みなさんが好きな「テニヲハを使った言葉」はなんですか?という質問もしてみたいですね! では、また次号で。

●このコラムは、難問漢字館Vol.51に掲載されたものです。

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