パズル制作の裏側 第47話

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朝型か夜型か…

 若いうちは大抵みなさん夜型。長くパズルを作っているということは(私のことですが)それだけ年数が経っているということで、友人知人たちと話をすると、朝型がめっきり増えている気がします。しかし私の夜型はなかなか変わらない、笑。

 ある小説家が書いてたんですが、朝起きて午前中に仕事(小説ですね)、午後は運動も含めた自由時間、夜にお酒を少し飲み気分がのれば読書を少々、そして就寝、みたいなことを書いていて、なんて優雅で理想的な生活なんでしょう!と試そうと思ったこともあるのですが、やはり1日も続きませんでした、泣。

 こちらは小説ではなくパズルなのでかなり違うと思うんですが、ネタを探すというか調べ物をすることも実は多いんです。都道府県や歴史や人物、あるいは例えば歌謡曲など、テーマ(お題)をいただくことも私はかなり多く、おそらくそういう(面倒臭い?)のをあまり嫌がらないとか、いろいろな理由があると思うんですけれど、そういう場合、ひたすら調べまくるわけです。

 それこそ30年前は図書館に行ったり、いろいろ大変だったわけですが、いまはもちろんインターネット。誤情報も少なくないし、あまりにも情報は膨大なので、それはそれで苦労します。それでも検索システムと「勘」を総動員して、ひたすら単語・情報を探し出してメモします。その膨大ななかからパズルに使えそうなもの・使えそうもないもの、答えに向くもの・大マスに向くもの・リストに向くものなどを、その場その場で取捨選択しながら、とにかくメモ。

 同一テーマで4問くらい作るとなると、1週間くらいそのことで頭をいっぱいにします。あまりレベルは高くないのですが、頭と身体を情報集積マシンのような状態にする感じ。気恥ずかしい言い方ですが、その1週間はそのテーマのニワカ専門家になってます。そして(これが大切なことなんですが)作成し終えた瞬間に、ホボ忘れるように努力します。実際に気持ちよいくらいすっきり忘れてしまうんですけれど(記憶術というのはいろいろあるようで、階層的にした個別の部屋に仕舞っておいて必要なときに出す、みたいな感じです。でもこれってコンピュータそのものですよね。思い出そうとするときはトントンと部屋をノックする。ニワカ専門家になってる期間はある部屋に籠りっきりみたいなイメージです)。

 テーマなどの指定がない場合でも、答えに関連性を持たせるために、ニュースサイトなどはよく見ます。気分転換はとても大切(これは読者の方も同じじゃないかしら。行き詰まったとき、時間を空けてマス目を見直すと何故か思い付く、という話をよく聞きます)。ニュースサイトなどを見る目的は、マス目にあまり見かけない文字を使用した熟語を求めてのこと。あまりニッチすぎないように、でもなるたけ突飛なものを探します。暗くなりそうなものは避けて、でもできるだけパンチがあるものを。ひとつよい熟語を見つけたら、そこから関連する言葉を調べます。反対語や類義語、カテゴリ違いなども意識しながら。

 余談ですが……前にカギ付きクロスワードパズルの作成・チェック双方に関わったことがあります。タテ1のカギから連想する言葉をマスに入れる、というあれです。ナンクロと違って、カギ付きクロスはカギと言葉が合ってるかも調べないといけない。それこそ膨大な分量です。最後の総チェックの日には十数人が事務所に集まり(インターネットはまだ普及してなかった頃なので)、山積みの辞書と資料の本を目の前にして朝までワーワー言いながら(口頭確認の連鎖・連続ですね)チェックする。私は助っ人だったので終電でうまく逃げ出したんですけれど、深夜なのに出前の食料なども含めて、部屋は凄い状態でした。おそらく朝までソファで仮眠する人もいたに違いありません。まだバブルの匂いがあった気がします、97年くらいだったかしら。いまは、ああいう作り方してるところはないだろうなあ。

 さらに余談を……現在は漢字ナンクロを作ることが多い私ですが、かつては様々なパズルを作ってました。いまでも注文があれば作るんですけど、笑。たまにカナナンクロや様々なパズル、変形ナンクロを依頼されると、かなり新鮮な気持ちになります。そういうときに改めて思うことは、パズルは気分転換・頭の回転・合理的思考のある意味究極のものだということ。作ってから、ああこういう構成になっていたんだっけなと自ら再確認したり。たぶんみなさんが解いてから「ああ、こうなのね」と思うのと似てるかもしれません。作家側からすると、解いたあとで「ああ、こういう意図なのね」と思ってもらえるのが一番うれしいんです。

 いろいろ思い悩むことが(こんな私でも、笑)あるんですが、パズルを作っているときは純粋にクリア・明瞭な気持ちになれて、抱えていた重いものを(その瞬間だけかもしれないのですが)忘れていることがあります。これも、読者のみなさんに通じることではないかしら。

 あ、そんなこんなでまた夜も更けて。おやすみなさい!

●このコラムは、難問漢字館Vol.49に掲載されたものです。

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