パズル制作の裏側 第46話

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難問漢字館Vol.45のQ38を分析してみよう

 読者の皆様から「Vol.45のQ38が難しかった!」というコメントが殺到していると聞きました。

 編集さんが「なぜなんでしょう?」と不思議がっていたので、自ら分析してみることにします。まずはパズル面を。

 まず、最初から身も蓋もないことを言いますけれど、この問題には「お助けヒント」がありません。そして「熟語シート」にも「無主風」しかない。同じ号のQ43は表出し文字なしのホワイトなんですが、そちらには13個の熟語がお助けヒントと熟語シートに明示されています。この差は大きい。「Q43はヒントが多すぎる」と少々お怒りになっている読者の方もいらっしゃいました。Q38では「摘除」くらいは熟語シートに出してしまってもよかったかもしれません。お助けヒント・熟語シートに関しては作者は関与していないのですが、そこの辺りの塩梅はなかなか難しいと推察。多すぎ・少なすぎ、常に両方の行ったり来たりになるのは致し方ないところだと思います。

 数字的に分析してみます。比較対象として、同じ号のQ43(表出し文字なしホワイト)を使います。パズル面サイズはどちらも20×25。

 大きく差はないように見えますが、熟語の実質の情報量(3文字と4文字)がQ43のほうが多いのがわかります。Q38で、左上隅をあえて3字や4字にせずに2字にしているのは引っ掛けです、正統派ナンクロでこうすることはまずありません。2字が多くなっているのは、このようないわば「マス目の無駄使い」的な側面もあります。

 また、Q38では解答にテーマ(年越し)をもたせているために、「除」のようなあまり熟語構成力がない文字が使われています。「除」を含む熟語としては「除光液」「除幕式」「大掃除」「加減乗除」「所得控除」などがありますが、ここではあえて「除雪車」「除虫」「武装解除」が選択されている。我ながら攻めてますね、笑。

 Q38の解き口(一番最初のとっかかりになる熟語)を具体的に見てみましよう。読者の方の指摘にもありましたが、「風呂場」「町役場」「一人二役」あたり、そして「自分勝手」と「無手勝流」が同じタテ列にあることに気づけると、かなり黒マスも埋められるはずです。「大所高所」「本家本元」「大本山」あたりに気づくと、「老大家/月下老人」「生年月日/生一本」あたりも埋まる。右下エリアにある「地水火風空」を想像できれば「四方山話」「地方公演」「主人公」あたりも埋められるかと。「一両日」がわかり「武装解除」「衣装道楽」「文武両道」「一衣帯水」「文語文」(「語呂」もヒントになりますね)あたりが推測できれば……みたいな展開でしょうか。

 最後に、ホワイトというより黒マスの基礎のおさらいを。黒マスは四隅にはない。黒マスは繋がらない。やや狡い手ですが、黒マスは解答になっている数字でもない。など。使用頻度が高め、というのも特徴といってよいかもしれません。ちなみにQ43は使用頻度9回が多いのに対し、Q38の黒マスは使用頻度7回が多い、というのもQ38を難しくさせている要素なのかもしれません。

 あとQ38には「後後月」「夜夜中」はありますが「事事物物」「明明白白」「三三五五」パターンはなく、「一●一●」タイプもあまり多くないので、その辺りは少しヤリスギタかもと反省したいです。

 作成するのとは違った、難しい時間を過ごされている読者の皆さんに尊敬の念を覚えながら、そんなふうに分析しました!

●このコラムは、難問漢字館Vol.48に掲載されたものです。

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