パズル制作の裏側 第37話

【前回】パズル制作の裏側 第36話

 本誌38号のお便りコーナーで好きな漢字として「牽」が最初に紹介されていて、好きな理由とともに編集さんの選択がとても素敵だなと。他にも拡大しないと文字自体把握できそうもない漢字が紹介されていたりして、そちらも。現在2136字とされる常用漢字でない文字はなかなか日常では目にする場合がないですもんね。常用漢字自体も日常的に使われているのになぜか外されている文字があったり、追加されたり。
特に地名で使うのに常用漢字ではないという文字もあったようで、都道府県名に使うものなどは現在は追加されているそう。この辺りのことはマメに追ってないと旧字体なんかもそうなんですが、なかなか追いついていけません。ナンクロでの使用率もそこそこありそうな「栗・嘘・蝶・菩・醤・謀」などの文字は現在も常用漢字ではないようです。まあこれらの文字がチェック表に入ることは少ないかもしれませんけれど。
人名用漢字というのは(定義としては常用漢字以外で名前として使用してよい漢字という意味らしいです、私も今回知りましたが)863字あるらしく、つまり人名として使用できる漢字は2999あるのか、などと妙に納得。もちろん平仮名と片仮名も使えるわけなんですけれど。
人名用漢字一覧をつらつら見ていると、なんとこちらに「牽」の文字がある。なにか少し感慨深い気がします。他にもこれ常用漢字じゃないんだという漢字がちらほら。「阿・撫」などけっこう沢山ありました。ともあれ好きな漢字の集計結果を見ると多種多様、読めない字も混じっていたりして、フムフムに加えて驚きと。編集さんから応募ハガキに書かれた感想の抜粋をたまに送ってもらうのですが、手書きでのコメントはとてもうれしく、いつもありがとうございます。
この2年間はコロナの影響などもあり、いろいろと自粛する必要があるなかで、漢字パズルはそこそこ役に立つアイテムであるのかも、と改めて感じています。それでも10月には宣言がようやく解除されて、39号が発売される12月はどうなっているか予断は許さないのですけれど、短い秋を読者さんが楽しんでくれていたらうれしいです。ということで、唐突ながら秋の夜長に最適な映画の御紹介、苦笑。『第9地区』、2009年公開のもの。
ある都市の上空に謎の宇宙船が出現、でもそれは壊れており、そこにいたのは難民となった大量の地球外生命体だった。彼らは地上に移され、ある地区に隔離・定住することに。地球外生命体は何故か海老に似ていて、故にエビと罵倒されつつ幾年月。増えた彼らをさらに移住させようとする政府系武器商社の特命担当の方が主人公。何故か数年のうちに片言の英語を喋れるようになっている海老たちに(この辺り、奇妙奇天烈・摩訶不思議・奇想天外・支離滅裂)判子を押させようとする御役所仕事・杓子定規ぶりは呵呵大笑。ところが御本人が海老の根本液体に曝されてしまい、身体の一部が海老化。政府系武器商社から実験素材対象とされるに及び、そこを脱出・逃亡。そこから急激に痛快活劇化して……という展開。
海老を忌避する社会で、一部海老化した主人公は指名手配の犯罪者扱いされたこともあって、もちろんその社会に居場所はなく、という辺りが昨今の御時世もあり、妙に身近に感じられて、という次第です。結末に触れるのはよしますが(すでにかなりネタバレ的なことしてます、すみません!)、自宅待機時間に飽き飽きしている方には(特に空想科学小説が好きな方には)お勧めしてもよいかなと。
常用漢字一覧には「付表」というのがありまして(こちらも私、今回はじめて知りました!)「玄人・雑魚・時雨・竹刀・山車」など119個、つまり熟語で普段読みでないもの、という定義なのかしら。実は「海老」もこちらに入っているに違いないと、このネタを選んだんですけど、当ては外れました、がっくり。それでもなるたけ沢山の常用漢字以外の漢字を使用して、と考えての映画紹介でありました。幾つあるかは検証しておりませんけれど。
漢字って本当に奥が深いですね。ちなみに「がっくり」も漢字あるかなと調べてみたのですが、存在しないようです。残念!

●このコラムは、難問漢字館Vol.39に掲載されたものです。

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