パズル制作の裏側 第35話

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「ワタクシがパズル作家になった顛末」
タイトル、恥ずかしいので変えます。そして36号を見てショック、文字詰め込み過ぎで字が小さすぎ。すべて私が悪い。ということで、今回は読みやすい文字の大きさで収まるよう、鋭意努力したいなと。
先号で触れたように、以前、他の雑誌で読者が送ってくれたパズルを添削するページを担当したことがあります。私はパズル好きというより職業=仕事として関わりはじめたので、システマチックにパズルを解析していくという流れでした。ですが、多くの読者は(特にパズルを作成して送ってくれるような方は)パズルが超大好きで、こだわりを持ってらっしゃる人が大多数。ただ詰め込み過ぎというか、無理がかかってしまって、パズルとしては成立しない場合も多かったのです。1ページのコーナーだったので、マス目のサイズが小さいこともあり、なかなかきちんと収まらないというパターンも多発。
実は、ある意味ではマス目は小さいほど大変と言ってもよいのです。とは言っても、最初から大きいマス目は大変。なので始めは10×10マスくらい、つまり別冊漢字館の表紙のサイズですね、これくらいからチャレンジしてみるのがよいかもしれません。しかし、先ほど言ったようにマス目は小さいほど大変。先号で触れた話と違うことをこれから言いますが、最初はヒント文字が続いてもよいので「自然な熟語でマス目を構成する癖」をつけることをお勧めします。特に2文字の部分。チェック表に入る文字は少なくてもかまわないし、ヒント文字の連続も気にしないことにして、自然な言葉・明瞭な熟語を使用すること。
自然で明瞭な熟語とはなにか。一番は正統派の四字熟語でしょうか。あまり明瞭でないものとしては「人文地理学」「数理統計学」「人事部長」「理事会・理事国・理事長」「○○家」的なもの、つまり合成語。「○○定食」という熟語はおそらく辞書にはひとつもないのですが、まあ日常的ではありますよね。でも特定性というか明瞭性はない。正統派の四字熟語でもあまり通すぎる(有名でない)のはどうかと思いますが、四字熟語のよいところは仮にそれまで知らなかったとしても調べてみると納得できて、ちょっとだけお利口になった気がすること。
「○○家」というパターンでもいろいろあります。「小説家」「批評家」「実業家」「裏千家」「総本家」「老大家」「金満家」「手腕家」「好角家」「一軒家」その他諸々。ただ意味・構造はそれぞれ違います。「小説家」「批評家」「実業家」はそれを実行する人という意味、「裏千家」「総本家」「老大家」は「裏・千家」「総・本家」「老・大家」です。「金満家」「手腕家」「好角家」は3文字全体で意味をなしますし、「一軒家」はそれこそ別物です。「実業家」も「青年実業家」という形になると、かなりイメージが違いますよね。
また人それぞれ、得意領域というものがあります。歴史とか、文学とか、理数系とか。おそらく絶対数が少ないからかもしれませんが、理数系の方が作成したパズルは「この方は理数系だな」だとわかることも多い。漢字パズルは言葉パズルなんですけれど、パズルそのものはそもそも理数系であり、そちらから入った方も少なくないのだと思います。
得意領域を活かすのはとても大切、でも作成する立場にたつならば、広く浅く満遍なく、という姿勢が大切です。強烈な言葉を少しだけ使いながら、通に入り過ぎないこと。パズルを解く読者側からすれば「このタイプのパズルが好き」ということはあって当然です。理数系が好きな方もいれば、法律経済政治用語的な堅めのが好きな方もいて、うまく例が出てきませんけど(ごめんなさい、今度、出します!)優しい言葉が好きな方もいます。私自身は最近はそれほどパズルを解くことは多くないのですけれど、解いてみると、そのパズルの質が(同じ作家でもテイストがいつも同じではないのがまた醍醐味ですね)解く側の感想として、素直に立ち上がってきます。
よくできているなあ、と素直に思う場合、言葉の選択・セレクトと同時に、マス目をどのように構成しているかという点があります。このマス目の話、パズルを作成する場合、とても大切なことなので、続きはまた次号で。

●このコラムは、難問漢字館Vol.37に掲載されたものです。

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