パズル制作の裏側 第32話

【前回】パズル制作の裏側 第31話

「カギ付きクロスワードパズル」(続き)
カギ付きのクロスワードパズルのカギを作成してみましょう。実はカギには正解というものがありません。ナンバークロスならば「同じ番号には同じ文字」という絶対性があり、そこが好かれている要素であると思います。しかし、カギ付きクロスは別。パズルが成立しないようなアバウトさは厳禁ですが、それさえ維持されていれば、アバウトさが楽しみの深さを出すのです。具体的にみていきましょう。
一般的にはあまり普及していない漢字のクロスワードですが、今回は漢字バージョンに取り組んでみましょう、漢字パズル誌でありますし。
まず、問題マス目と解答マス目をまとめてどうぞ。

これを分解すると次のようになります。

(ヨコ1)竜頭蛇尾
(ヨコ4)十字路
(ヨコ6)傍聴
(タテ2)頭文字
(タテ3)尾張
(タテ4)十手
(タテ5)路傍

それではカギを作成してみましょう。

(ヨコ1)初めヨシヨシでも終わりは
(ヨコ4)別名、四つ辻
(ヨコ6)裁判を見学しよう
(タテ2)英語だとイニシャル
(タテ3)伊勢は津で持つ津は伊勢で持つ、○○○名古屋は城で持つ
(タテ4)銭形平次が銭とともに持つ
(タテ5)「○○○の石」は山本有三の小説

さて、いかがでしょう。すんなりとマス目を埋められたでしょうか。
埋められないのは最悪ですが、うまりに簡単に埋められるのも物足りないというものです。
カギ付きクロスの基本は、タテ・ヨコの片方はガチめにして、そこから、やや曖昧な片方も推測できるようにするということ
「初めヨシヨシでも終わりは」からすぐに「竜頭蛇尾」は思い浮かばなくとも「英語だとイニシャル」から「頭文字」を推測して、「○頭○○」ならば「竜頭蛇尾」が浮かぶという道筋は想定できると思います。
 また、カギ付きクロスでは固有名詞の使い方がある意味で肝、知ってさえいれば固有名詞はガチガチに固い(特定できる)ものですから。
、固有名詞の質が大切。例えば「○○○の石」は山本有三の小説」というカギ。これ、わかる人はわかりますが、わからない人にとっては、ちょっと難しいですよね。
日本文学がテーマという場合なら悪くないかもしれませんが。
(このようにカギ付きクロス、特に日本語のカタカナバージョンの場合はテーマを設けていることが少なくありません。)
 それに比べると「伊勢は津で持つ津は伊勢で持つ、○○○名古屋は城で持つ」のほうは(カギが長いことも含めて)多くの人が推測しやすいと思います。
(「○○○名古屋は城で持つ」だけにすると、また感触が違いますよね。)また、銭形平次の場合、多くの(特に年配の)人は誰でも知っていると思いますが、二十歳以下だと、、私には推測できません。
携帯電話が本当に身近になった現在では検索すればすぐわかるということもありますが、そこは使わないという設定で考えます。
(ナンクロでも辞書を使っている方は少なくないかも、もちろん辞書の使用が悪いというわけではありません。)
 前に書きましたが、クロスワードはタテとヨコで類推するもの。なので、片方しかない場合、より注意が必要です。ナンクロならば数字により特定できますが、カギ付きクロスの場合はそうはいかないので。
タテ3、タテ4、ヨコ6みたいな部分です。なので固有名詞(四字熟語やことわざ含む)の使用が無難なのです。
「○○○名古屋は城で持つ」のように○を使うこともわかりやすくする方法のひとつです。
カギには正解がないと最初に書いたように、カギはいろいろ変更できます。では、別のカギを考えてみましょう。

(タテ3)尾張を「尾崎」と変更し、カギを「早世のカリスマ、アイラブユー○○豊」
(タテ4)十手を「十両」と変更し、カギを「幕内と幕下のあいだ」
(タテ5)路傍を「路線」と変更し、カギを「駅にある、時刻表と○○図」
(ヨコ6)傍聴を「線香」と変更し、カギを「毎朝(仏壇に)あげます」

 最後のパターンでは「仏壇に」を入れるかどうかでもかなり違いますね。また変わったカギのパターンとして「漢字のみのカギ」というのもあります。
●今回のヨコ1だとすれば「四字熟語含動物名」とか。また、知識だけではつまらないという方も少なくないはずです。
それらについてはまた次号で。

●このコラムは、難問漢字館Vol.34に掲載されたものです。

【次回】パズル制作の裏側 第33話

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