パズル制作の裏側 第27話

【前回】パズル制作の裏側 第26話

パズル紹介、続きます。
まずは前号の宿題から。八角形パズルです。

中央のマスには1文字が入り、取り囲む文字とともに2文字熟語を形成します。その1文字はなんでしょう?というパズル。
この手のものは知識もありますけど、大切なのは直感な気がします。答えはズバリ「無」。つまり構成される2文字熟語は「虚無」「皆無」「南無」「空無」「無礼」「無惨」「無敵」「無欲」となります。それでは前回に触れた「ほぼ・決定できない状態」とはどういう場合でしょうか。



さて、中央に入る1文字はなんでしょう? これ、難しいですよね。というより、入る1文字はなんでもよさそう。「国」は入りますね。でも他にも入る文字もありそうです。実は、どんな文字とでもくっつくような文字を適当に入れて作成しました。あ、「道」でもよいですね。つまり、このパズルはパズルとして成立していないということになります。ここまで極端でなくても、「同じ数字が同じ文字に対応する」という厳密なルールがあるナンクロのような場合でない限り「決定しにくい状態」というのは起こりがちなのです。たとえば、これはどうでしょう?

中に入る1文字、見当つきますか。一応「理」が入る問題として、それもよくない例として作成しました。直感的に入る文字はあまり含まれていませんよね。それでは、こちらはどうでしょう?

だいぶ「理」に直感的に近い文字が含まれてきた気がします。その傾向をさらに拡大してみましょう

さらに「理」に近い空気感が出てきた気がします。ただ「肌理」(きめ)などは知らない方もいるでしょうし、知っていてもあまりピンと来る熟語ではないかもしれません。また「総」「論」などもたくさんの文字とくっつきやすい文字でありますし、それならば「総」の代わりに「整」「処」「修」「経」「管」「摂」「倫」などの、「論」の代わりに「想」「念」「由」などの文字を入れたほうがよいかも、でも「論」と「理」はとてもイメージがとても近い文字だし、などと、パズル作成者は試行錯誤しているのです。

 また「一家団欒」の「欒」などは手元の辞書によると「団欒」と「欒樹」しか載っていませんし、「画竜点睛」の「睛」も「眼睛」「点睛」「睛眸」しかないようです。つまり、これらの文字では八角形パズルを作ることは無理。また「平均」の「均」も「均一」「均衡」「均質」「均勢」「」整」「均斉」「均等」「均分」「均平」「均窯」「均沾」「均霑」「平均」のみが「均」を含む2文字熟語のよう。聞いたことのない言葉も混じってますよね。

 そもそも八角形パズルは、8個ほど用意して、8文字をピックアップしてもらい、「その8文字のうちの6文字を使って、3文字の言葉を2つ作ってください」というスタイルが多いのです。邪道になりますが、八角形パズルからだけでなく(そこからはわからなくても)、解答になる3文字の言葉から、八角形の中に入る文字を類推するという方法もあるというわけ。
 ともあれパズルは、楽しく、そこそこ難しく、解けた段階で、すっと納得、腑に落ちて、気持ちがよい。それがとても大切。なるほど納得!と感じていただけるのが一番なのです。推理小説でも、導入と展開はまあまあ、楽しく読み進めて、でもラストで「ううむ。これ、あり?」的な場合も少なくないですもんね。どの分野もなかな奥が深いです。さて来号は、さらにパズル紹介を続けましょうか、どうしましょう?

 それではまた次号で。

●このコラムは、難問漢字館Vol.29に掲載されたものです。

【次回】パズル制作の裏側 第28話

ページトップへ戻る