パズル制作の裏側 第23話

【前回】パズル制作の裏側 第22話

前回の宿題から。

「アリバイ」は漢字表記すると「現場不在証明」です。推理小説や刑事ドラマでよく出てくるやつ。(犯行)現場にはいなかっという事実の提示です。調べてみると、英語なんですね、なぜか、別の言語だと思い込んでました。これもよくあること。言葉・熟語を調べ直してみると、いかに自分が曖昧な知識を持っているか気付きます。ちなみに、語源はラテン語だそう。 
 「SF」は漢字表記すると「空想科学小説」です。サイエンス・フィクションですから科学小説でもよかったように思いますが「空想」を加えたところに翻訳の深みが出ている気がします。それにノベルではなくフィクションですしね。
 明治期には大量の言葉が英語・ドイツ語などから日本語に翻訳されました。ここ数十年の「なんでもカタカナ語」に勝るくらいの膨大な数の言葉が流入してきた。それをうまく受け入れられたのが、よくも悪くも日本(語)の凄みのような気がします。大量の翻訳語の受け入れは、言葉だけではなく理念・概念の受け入れとも関わっています。「学校」だって江戸時代までは「寺子屋」や「塾」などが多く使われていて、言葉としては、明治になって発明・再発見されたようなものですから。義務教育という理念とともに提示されたといってもよいかもしれません。(近代)「国家」概念のようなものも江戸時代までは「幕府と藩」「お上と庶民」だったわけで、外国との関係・軋轢のなかで(主に植民地化されるのを防ぐために)生まれ、学ばされたもの。「瓦版」が「新聞」になり、学校教育が義務化され、読み書きがより大衆化されていく。
  ヨーロッパの言語がラテン語から転じたものが多いように、そもそも日本語は中国語・漢語から転じた(漢語をあてはめた)ものが多いようです。ひらがなだけだった和語に漢字があてはめられ、加わって、展開・転回・進化していく。律令制などの(初期)国家概念も、もちろん中国から来ています。四字熟語や故事成語なども、漢語から日本語に移植されたものが多いですよね。江戸時代の鎖国期も(これも昨今は、それほど鎖国していなかったなどの諸説も出ているようなんですが)主に大阪・江戸での言葉や文化の爛熟的展開を経て、言葉の深度をふかめることに寄与しています。そして明治からの大きな言語状況の変化、さらにここ数十年のなんでもカタカナ化。言葉ってやっぱり奥が深いです。ただ最近のカタカナ語の氾濫は(意味が逆にわかりにくくなってることも含めて)ちょっと疑問に思う点もありますが。
 最近、クイズ番組を見ました。(実はあまり見ないのですが、たまに見ると)レベルの高さに吃驚。(「びっくり」を「吃驚」と表記するのも、なかなかのものですよね。)芸人さんからタレントさんから高学歴者さんまで、かなりの難易度の問題を次々と見事にクリアしていきます。なかでも漢字問題の多いこと多いこと。前回「知らないものに慣れるのはけっこう早い」と書きましたが、クイズもたぶんそう。どんどんエスカレートしていきます。難読語なんか、どこの文献から引っ張ってきたのかと思うくらい。おそらく難問館読者の方はクイズ番組好きが多いのではないかと推測します。(私も勉強しないと、笑。)
 また前回「一押二金三男」の趣きと書きましたが、これは女性の愛情を獲得する順番のことだそう。まずは押しが大事で、次に財産・金があること、男振り・見た目はその次という話です。少し前に「三高」という言葉が流行ったようですから、昔も今もあまり変わりないのかもしれません。ちなみに三高とは「高収入・高学歴・高身長」のことだそうで「押し」の価値が昔よりも減ったということでしょうか。ただ現在は「三高」はもう古く、ほどほどが人気だそう。「三NO」や「四低」などの言葉が乱立しているとかいないとか。(ちなみに前者は、暴力なし・借金なし・浮気なし、という「〜なし」で、後者は「低姿勢・低依存・低リスク・低燃費」だそうです。なかなか考えますよね。)また、「一押二金三男」もいろいろバージョンがあり「一押二金三姿四程五芸」などもあるようです。
 また「三枚目」という言葉は、歌舞伎の看板で3番目に道化役の俳優に書かれていたことが由来らしく、いつのまにか「二枚目半」なんて言葉も定着しています。ちなみに看板の1枚目は「主役」だそう。
 また、興味深い言葉として、人名めかした熟語があります。「骨皮筋右衛門」(最近は「骨皮筋子」も?)「石部金吉金兜」「吝太郎」「飯田左内」「小言幸兵衛」「飲兵衛」「忠兵衛」などなど。「合点承知之助」なんていうのもあります。どんな人物を想定しているか、わかるかしら? 

●このコラムは、難問漢字館Vol.25に掲載されたものです。

【次回】パズル制作の裏側 第24話

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