パズル制作の裏側 第21話

【前回】パズル制作の裏側 第20話

 前回「平仮名入りナンクロ」に触れました。せっかくなので、今回はこれを取り上げます。漢字館系列(別冊や本誌・難問館を含む)ではあまり掲載されていないようですけれど。平仮名入り? なんだ、そりゃ。疑問はもっともです。説明するより、例題をあげてみましょう。 

これが平仮名入りナンクロです。「月面宙返り」を前提として小さなマス目で作成してみました。すると「回り舞台」「金食い虫」「初日の出」「凍み大根」「二日酔い」「回し者」「出合い」「大忙し」「誘い水」「彩り」などが入りました。さて、これがパズル(問題マス目)になるとどうなるのでしょう。

小さなマス目で、わかりよい言葉を選択したため、あらかじめ表示されているヒント文字が繋がっている部分がありますが、これはもう少し大きなマス目になればなくなります。ただこの段階でも「○○宙返○」「金食○虫」のような部分は、普段の漢字ナンクロの感覚とはかなり違っているのではないでしょうか。
スケルトン風ナンクロが正式なナンクロであるかどうか曖昧という意見があるのと同様に、平仮名入りナンクロにも毀誉褒貶があります。それは理解できる。どういうことかというと「○の○」とか「○い○」みたいなものは辞書にあるレベルでも膨大にありますし、日常言語感覚でいえばナンデモアリになってしまいます。この例題で具体的にいうと「○○大根」というのは山のように存在しますので、この言葉だけで「凍」と推測するのは極めて難しい、例えばそういうことです。
漢字のみのナンクロでいうなれば「○○学」や「○理学」がいくらあっても○を推測するのは難しいのと似ています。というよりもなにより、パズルとしてそれではあんまり面白くない。ルールとは別の(言うならば「パズルに取り組んでいて解けると気持ちいい」というような)解き心地のようなものがここでも大切になってくるのです。
ひるがえって「宙」という文字でいうと、「月面宙返り」をベースとするなら、さらに「宇宙飛行士」「気宇壮大」などが入ってくると、新鮮で楽しいパズルになるのではないかと。このパターンならば「宇」「宙」両方ともチェック表に入ることになり、少し考えることになるかと思いますが、解けると「あー」と(うれしく、新鮮に)感じてもらえるのではないかと。
スケルトン風ナンクロを好きな方がいるように(同時に、あんまり好きでない方もいるように)、平仮名入りナンクロもやってみたら好きな方もいらっしゃるでしょうし、もちろんそうでない方もいることでしょう。漢字館で今後このタイプを導入するかどうかはわからないのですが、いろいろな意味でいい感じに進められるとよいなと思います。なんといってもパズルは「素敵な息抜き」ですもんね。
(平仮名入りナンクロの問題点というか、「つ」と「っ」問題とか、送り仮名問題など、来号で展開するかどうかは、編集さまと相談したいと思います。あるいは、このことに限らず、なにか「質問」などありましたら、どしどし送ってくださいませ)。

●このコラムは、難問漢字館Vol.23に掲載されたものです。

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