パズル制作の裏側 第39話

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難問ってなに?

難問の定義ってあるのでしょうか。編集の方から次のように尋ねられました。
難しいパズルと易しいパズルの差はどこにあるのでしょうか? ホワイトは全部難しく感じるのですが、ホワイトのなかでも「易し目」「難し目」があるのだとしたらそれは何なのか。「難しい=難解語ばっかり」ということでもなさそうですし。また、前半のチャレンジクラスのほうに難解語が多いという感想もあるようです。
あ、コラムのお題にできそう。編集の方はさらに続けて、
1ページのホワイトですが、こちらを表出し文字をなしにして「超難問」にするとかは可能でしょうか。さすがに表出しゼロはあり得ないですか?
よいお題をいただきました。今回はこれをテーマに進めたいと思います。
我々パズル作家は毎回、編集者から注文を受けます。1ページでとか2ページでとか、正統派(スタンダードスタイルですね)でとか、大マスでとか、ホワイトでとか、しりとりでとか、リスト付きでとか、スケルトン風にとか、その他もろもろ。難問館では扱ってないですが、「館」シリーズの他のパズル誌では特集としてテーマに基づいたものもあり、その場合はまずテーマについて調べることから始まります。
また誌面の関係で「1ページの場合はチェック表を何個以下でお願いします」みたいな注文もあります。また、ほどほどの難問にとか、超難問でとか、あらかじめヒントとしてマス目に出ている文字(いわゆる表出し文字ですね)の数制限などの指定がある場合も。極端な場合では、ノーヒントスタイルでお願いします、というのもあります。
実は(作家により違うと思いますが)パズルが完成した段階で大枠をチェックするとき、つまり、同じ表出し文字がマス目にないか(そうならば、その文字はチェック表に入るべきですから)、書き込みや入力ミスがないか、あるいは、シマができてないか、などをチェックするとともに、マス目で使われている熟語の数・チェック表の数・表出し文字の数を確認をするタイプもいます。まあ、私、なんですけれど。
パズルのマス目は黒マスの配置により決まります。いわゆる黒マスを階段パターンで多く配置すると、2文字の熟語が増え、3文字以上の熟語が減ることになる。大マスがある場合、それにより使用する熟語数も減ってきます。大マスがマス目を少なからず専有することになりますので。
2文字の熟語はいわば繋ぎです。それが多過ぎると、3文字以上の熟語が減ってしまう。それは魅力を失う原因になります。とはいえ、2文字を少なくすることばかりを意識していると、局面で無理がかかり、2文字部分にあまり馴染みのない熟語を使用することになり、解き心地が悪くなってしまう。その辺りの塩梅こそ、腕の見せどころ。
チェック表に入る文字数と表出し文字の数は相関関係にあります。マス目に2度以上使用される文字はチェック表に入り、1度しか使用されない文字は表出し文字となるからです。難易度の話でいえば、難問ではなくて逆の「初心者向け」のときに意識していることなんですが、チェック表に入る文字はできるだけ何度も使う、ということがあります。また、2文字ではあまり確定要素にならないので、3文字以上の熟語の使用頻度を高くする。2文字熟語の場合でも、たとえば「夢」ならば「夢見」のような簡単な熟語ではなく、「夢幻」や「夢枕」といったパワーのある熟語を使用するとか、そういうことですね(大きくいえば、難問はこの逆とも言えます)。
余談になりますが、本誌では扱っていませんが、姉妹誌のナンクロ漢字館では定番になっている「ボナンザ・パズル」(マス目になっておらず、3文字と4文字の熟語が整然と並べてあるスタイル)は2文字を排除したナンクロといいますか、そういう構造のパズルです。スケルトン風ナンクロにも似た要素がありますね。マス目の作り方(黒マスの配置)こそナンクロ作家の腕の見せどころと思っていますが、いろいろなスタイルのパズルにより、使える文字や熟語も変わってくるので、どのスタイルで作成しても、常にこちらとしては勉強になります。
あ、もう誌面が足りない。続きはまた次号で……なんですが、最後にもうひとつだけ。使用する熟語はパズルによりなるたけ変えるように努力・意識している我々作家ですけれど、使用する文字は違っていたとしても、最終的にチェックするときに判明するのですが、使用した熟語数・チェック表の数・表出し文字の数・比率には大きな違いはない、という不思議な事態になります。でも実はそれは不思議ではなく、パズルはマス目というスペース(15×15ならば225マス、20×25ならば500マス)を熟語がどうシェアするかということなので、理に適っているのです。けっこうわかりにくいかも(笑)。続きはまた次号で。

●このコラムは、難問漢字館Vol.41に掲載されたものです。

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