パズル制作の裏側 第14話

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 今回は「ホワイトナンクロ」について解説します。まずは質問。「ホワイトナンクロ、好きですか?」

編集部によると、ホワイトナンクロは好き嫌いが分かれるそうです。つまり「嫌いな人は嫌い」だけど「好きな人は好き」というわけ。理解できます。単純に取っ付きにくいですもんね。そこで改めてになりますが、例を出します。次にあげるのは難問漢字館VOl.15Q22のマス目です。

そして次にあげるのはこれをホワイトナンクロに変更したマス目。

真っ白。確かに、取っ付きにくい。取りかからないうちに「嫌い」と言ってしまう読者がそこそこいるのも無理はない。でも実はこのホワイトナンクロ、チェック表に入る黒マスの数は1個だけ(チェック表36=■になっています)、よく見れば「やけに36が多いなあ」と思うはず。黒マスを確定するのはそれほど難しくはありません。「チェック表に入る黒マスの数は1個だけ」みたいな極端な問題はそれほど多くはありません。ですが、たいていの場合、一般の文字よりも黒マスのほうが使用頻度(マス目に表れるナンバーの数)が高い場合が多いのも事実です。

もう少しあとで言おうとしていたんですが流れもあり、ここで言及しておきましょう。ホワイトナンクロの難易度は「チェック表に入る黒いマスの数」により飛躍的に変化します。先ほど例にあげたように黒マスが1つならば、黒マスの確定は容易です。けれど先ほどの例題でもチェック表に入る黒マスの数が10個になったなら、そうはいかない。ホワイトナンクロの性質上、チェック表の中の黒マスの数はいくつにでも増やせます。(厳密には総マス目数との関係で、もちろん制限があるわけですが、極論ではそうなります。)実は、ここら辺りはパズル作成者の腕によるのですが、それはまた後ほど。無理矢理に(あえて「無理矢理に」と言います)難しくしても、楽しいパズルになるとは限らないですからね。
ともあれ、一見「真っ白」に見えるマス目だとしても、ヒントとなるあらかじめ表に出ている文字とともに、「チェック表に入る黒マスの数」はパズルに大きく関係しているわけです。いままでホワイトナンクロは無視していた方も、食わず嫌いせずにチャレンジしてもらえればと。まあ、難問漢字館の読者はどちらかというと「好き」の方のほうが多いのかもしれません。でも編集部に「チェック表に入る黒マスの数が少なめ」の問題を提案してみようかな、などとも。

ホワイトナンクロは黒マスが隠れている(厳密にいえばナンバー化されている)ので、その特徴も面白みもそこ、つまり「黒マスの配置」にあります。ですが、それは次号に回すとして、今回は横道をもう少し。

ホワイトナンクロの歴史はそう古くはありません。漢字ナンクロ自体それほど歴史が深くないなか、さらにその後に出てきたものですから。ちなみに、カナナンクロにおいてはホワイトナンクロは基本的に存在しません。もちろんアルファベットのクロスワードにおいても。(「チェック表に入る黒マスの数が1個か2個」みたいなかたちでは存在するかもしれませんが、カナナンクロではヒント言葉があり、それがマス目に存在するだけで基本的に1つか2つの黒マスが特定できてしまいます。)カナやアルファベットでは黒マスを隠してしまうと、下手をすると別パターンのマス目ができてしまう場合があるからです。ホワイトナンクロは漢字ナンクロの特殊性とともに生まれてきたと言っても過言ではありません。ホワイトナンクロにのみ許されている「1つの文字にいくつものナンバーが振り当てられている」という掟破り!もあるのですが、それはまた次号で。

このコラムは、難問漢字館Vol.16に掲載されたものです。

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