パズル制作の裏側 第9話

【前回】パズル制作の裏側 第8話

 漢字ナンクロにはいろいろなスタイルのものがあります。前回まではしりとりナンクロを扱ってきましたが、今回からは別のスタイルの話をします。おさらいとして、漢字ナンクロのスタイルを列挙してみましょう。
・スタンダード
・しりとり
・スケルトン風
・ホワイト
・大マス入り(文字が入っているものと白いもの)
・マス目の外にリストがあり、それがマス目の指定マスに入るもの(言葉・文字・はみだし)
・ボナンザ連動、文字パーツ使用、ピースがリスト、熟語ボナンザ、など特殊なもの

細分化すればさらに可能かもしれませんが、大きく分けるとこんな感じになります。実は「スタンダード」を掘り下げるのがもっとも話が深くなるのですが、それは全体を概括したあとで。とりあえず、さまざまなスタイルを総覧してみましょう。今回は大マス入りをとりあげます。

【例その①】

この場合、大マスの「遊」は「物見遊山」「園遊会」「西遊記」というかたちでマス目に使用されています。別の例を見てみましょう。

【例その②】

 こちらのマス目では「遊」は「物見遊山」「園遊会」というかたちでマス目に使用されています。さらにもう1つ例を見てみましょう。

【例その③】

 こちらのマス目では「遊」は「物見遊山」「園遊会」「遊園地」「外遊」「遊泳」というかたちでマス目に使用されています。これらの例では「遊」が言葉の途中にあるかたちの言葉をチョイスしましたが、「遊園地」「遊歩道」「外遊」のように言葉の先頭と末尾にのみ「遊」が使われている言葉をチョイスすることもできます(3文字以上の言葉で「遊」が末尾になる一般的な言葉はあまりないですが)。

おそらく、これらのマス目を見て驚かれたのではないかと思います。どれも「物見遊山」「園遊会」をベースにしたのですが、言葉の配置の仕方でマス目=黒マスがこんなに違ってしまうのです。
見てわかる通り、中央の例では「物」の部分でのみ、外側のマス目とつながっています。そのぶん(本コラムの第1回で扱った)マス目に島ができるのを回避するために、大マスの周囲を大回りするかたちでマス目全体が構成されています。このように、大マスが入っているマス目においては「黒マスの配置=全体のマス目」という要素がそのパズルの本質の半分以上を占めるといえます。

さて、大マス入りナンクロの場合、出題のマス目と解答のマス目で大きく違うところがあります。それは言うまでもなく、出題のマス目における大マスが「文字入り」か「白マス」かということです。このコラムの例題では解答のマス目としているので文字入りになっていますけれど。

これも本コラムの第1回で言及しましたが、漢字ナンクロは日本で独自に発明・発展していったものです。その長くはない漢字ナンクロの歴史の中でルールとスタイルは徐々に厳密化されてきましたが、雑誌や作家によりけりでもあり、厳密でない部分もあります。
私の認識では、問題マスにおいて「表に出ている大マスの隣のマスには、数字マス=チェック表の文字しか入れられない」というものがあります。ヒントとなる表に出ている漢字が続いてしまうから、という理由です。しかし、おそらくこれは厳密なルールではありません。そもそも「ヒントとなる表出し文字が連続してはならない」というルールも厳密にはありません。そのほうがスタイリッシュであり、パズルとしての面白みも高まるだろう、という暗黙のお約束だと思います。

これもルールではないのですが、マス目に複数の大マスがある場合、出題のマス目の大マスが文字いりのパズルでは「それらの文字は関連があること」が多いと思います。『ナンクロ漢字館』で出題した「屋・久・島」「横・浜」「長・良・川」「金刀比羅宮」や、本誌の今号Q38(80ページ)の「株・式」などのように。逆に、問題マスの大マスが白マスのパズルでは、そこに入るべき文字が解答に関わることが多いと思います。

大マスに「金刀比羅宮」の例を出しました。これは少し変わったかたちのパズル。これについては次回詳しく解説したいと思います。

●このコラムは、難問漢字館Vol.11に掲載されたものです。

【次回】パズル制作の裏側 第10話

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