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塩梅と行ったり来たりと気分と

第53話

前回「まっしろしろ」について車の運転で例えてみました。
気を遣ったギアチェンジと、近くはもちろん遠くを確認しながら、かつスムーズに。
急ブレーキはもちろん、急発進も禁物。左右きょろきょろ、速さもそろそろと進んでいく感じ。
はじめての峠道で緊張感を味わいながらのドキドキとは正反対の世界とも。

実は先日久しぶりに運転したので、また書いてしまいました。
たまに運転するとうれしいですよね、というより運転できなくなりそう。
遠くないうちにまた挑戦したいと思います。歩行者も自転車もいる町中、超に超がつくほどの安全運転なんですけれど。
今度はちょっと山のほうというかヒトケのないほうに行って、ハンドルさばきを楽しみたいかも。
もちろん安全運転の範囲内で。レンタカーだったんですが、最近のクルマは装置がいろいろついてますよね、それにも驚き、新鮮な気持ちになりました。

閑話休題。つまり、おそるおそるチマチマと、途中でのチェックも欠かさずに、そんな作成方法が「まっしろしろ」です。
そして、そんな「まっしろしろ」を作成した前後にはワイルドな熟語やマス目に挑戦したくなります。これって振り子の原理なんでしょうか。

マス目の配置でいうと、たとえば大マスが入るマス目は必然的に大マスの周囲からマス目と熟語を策定するのが定石です。
大枠の方針が決まり、大マスの周囲が決まると、全体のマス目もその流れで早めに確定させることが多い。
2ページくらいでは特に、ジャンボだとまた余裕があるんですけれど。

絵でいうならば、全体の構図を決めてしまうことによって、その隙間・細部への関わり方が限定されてくる……みたいな感じ。
隙間の部分の大きさや形によって、その部分に描き込めるもの(熟語)も必然的に限定されてくるというか。
L字型に3文字と4文字が交差する場合でも、左上で交差するのと左下・右上・右下で交差するのでは入れられる熟語が違います。
三国一・三日天下、高学年・年百年中、日本海・海千山千、口達者・第一人者、こう書くとわかりやすいかもしれません。

黒マスを配置するとき、多少無理めにマス目を構成する場合と、安全なマス目に逃げる(逃げるというと言い方が悪いですが)部分を多くする場合があります。
言う間でもなく、無理めなマス目にすると、面白みも馴染みもない熟語しか入らない場合があり、作家側としてはそれは避けたい事態です。

そこは作家の矜持ともいうべきもの(ただ「まっしろしろ」の場合、2文字ではあまり馴染みのない熟語を使わざるを得ないときがあって、それは本当にゴメンナサイ!なんですけれど)。
そしてまた、無理めなマス目にした場合、作成後に修正が必要になったり、やり直さないと気が済まなくなったとき「こんなにハードなマス目にしなければよかった」などと後悔したりもするんですけれど笑。
これは自業自得ですね。

ですがマス目構成上、最終的にあるエリアが2文字ばかりになりそうだと、多少無理めなマス目にしてでも、その事態を避けようとします。
それはやはり作家のサガ。

「まっしろしろ」の場合は無理めをそもそも回避しながら作成しているので、そういう事態には滅多にならないのですが、

安全・安全であまりにも凡庸なマス目・熟語ですと、面白みに欠けてしまうのもまた事実。
まあ結局、塩梅ですよね(アンバイを漢字で書くと塩梅なのは『難問漢字館』の読者さんには言わずもがな。私はといえば実はこの世界に入るまでは知らず、知って驚き、嬉しくなった記憶があります。
そういう場合、ついつい調べてみたくなる。調べてみると、塩と梅酢で料理の味付けをしていたからだそう。梅干しじゃなくて梅酢なんですね、ふむふむひとつお利口になった、みたいで、そこは嬉しい道草です。
あ、道草もいま調べてみたらウマが語源の言葉でした)。

作家にとってマンネリは大敵、そのためパズル作成に向かう姿勢・気分はとても大切なのです。
実をいうと、大敵と言いつつ、そこそこのマンネリは大切で、それにどれだけ耐えられるかというのも同じくらい重要。
まあ最終的にはなんでもそうかもしれませんが(繰り返しになっちゃいますが)塩梅ですよね。
よい塩梅であることが最終的には大事。

チャレンジ精神的なものをなくしてしまうと、よくないマンネリに陥ってしまう。
ですがまた常に、逆もまた真なりで、やり過ぎてしまうとその結果は言う間でもなくヤリスギに。
それでもやり過ぎてしまわないとヤリスギであることはわからないわけで(私が痛い目にあわないとわからないタイプなだけなのかもしれませんけれど)、
挑戦して反省して、行ったり来たりして。そしてそれ自身をそこそこ楽しめる気分(頭と身体の状態)で。それがとても大切。

モットーは、なにごとも勉強・触れることを多くして・なるたけ楽しもう。
「言うは簡単行うは難し」なんですけれど、意識するだけでも違うんじゃないかしら、と行ったり来たりの日々を過ごしています。

また、想像できるかもしれませんがパズル作家は机にしがみついている時間がとても多くなりがち。運動も不足がち。
これがまた大問題なんです(あ、人それぞれの要素も大きいと、もちろん思います。それに在宅デスクワークの方の大問題と言ったほうが正確かしら)。
通勤通学しているとけっこう歩きますよね、仕事中も外歩きの方はさらに歩いてそう(あ、車通勤の方はあまり歩かないか、やはり人それぞれですね)。
私の場合でいうと、1日1時間は歩く、とか決めていればいいのですが、そういう習慣もなく笑(つけたいのですが、なかなかつきません泣)、気づくとホボ歩いてない!みたいな日もあったりして、そうすると身体だけではなく頭も淀んでくるのです。

(このコラムは、難問漢字館Vol.55に掲載されたものです)

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