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続続続・難問ってなに?

第42話

前号(Vol.43)のQ43のノーヒントホワイトナンクロ、いかがでしたか?

そうなのです、1ページ表出しなしのナンクロはほぼ作成不可能なんですが、2ページ(20×25)だとギリギリ可能なのです(サイズがもっと大きくなると、より余裕を持てることになります)。

さておき、試験的に作成した1ページパズル(13×13)の分析を続けます。誌面の関係でパズル面は割愛しますので、前号を参照ください(前号をお持ちでない方はウェブにあるはずなので、そちらを参照)。

何度か書いてますが、2文字熟語はいくつあっても特定に役立ちません。つまり3文字以上の熟語の数こそ、ナンクロの生命線(プラス、意外性のある面白い熟語を、無理なく配置してこそがその醍醐味)。

今回の作例では、難問の話と、あまり推奨できないマス目の話を一緒にしてしまっているので、少しわかりにくいところがあるかもしれません。まとめます。

ポイントその①、2ページ(20×25)より小さいパズル面では、表出し文字ゼロは、ほぼ無理。

ポイントその②、3文字以上の熟語をなるたけ揃える必要があり、2文字はなるたけ少ないほうがよい(けれど、適切な数というものがある)。それはチェック表の数も同様。

ポイントその③、表出し文字を少なくした(ゼロにした)からといって難問になる(面白くなる)とは限らない。

細かく見てみます。

「ポイントその②」について、こうした分析後に気づいたことなんですが、正統派(黒マスあり)でチェック表を27くらいになるように作成すれば、もう少し表出しを少なくすることはできたかもしれません。そうすれば「1ページのホワイトを表出しをなしにして超難問にする」というお題にもう少し近づけたかも。

「ポイントその③」については、表出しを少なくできたとしても、おそらく「面白くない」。この作例の表出しの数は26ありますが、3文字以上の熟語に関与しているものを数えると12しかありません。

残りの14の表出しは、チェック表の数をしぼったために、仕方なく2文字部分で使用されているだけで、チェック表に関わる文字の特定には関与していない……つまり「ほとんど使用されている意味がない」のです。

そもそも超難問とはナニカ。表出しが少なければそれでイイノカ。面白く、魅力的でアルノカ。

前号のお便りコーナーにもあった「下地中分」とか、あるいは「高手小手」といった、漢字パズル熟練者でなければ、ほぼ知らない・使わない熟語は、実はパズル面にかなりたくさん登場します。昨今はクイズ番組の隆盛もあり「難読漢字・読み」「四字熟語」みたいなものは、世間でもかなり認知されている(喜ばれている)と思いますが、そうでない熟語も多い。

「下地中分」が鎌倉時代から南北朝時代にかけての土地分割・支配の用語であると、誰が知っている(知って得をしたと思う)でしょうか? 研究者か、私大の日本史の受験生くらい? 「高手小手」は罪人を縛り上げる方法です。これも現代的とは言い難い。それではなぜ、それらの熟語が漢字ナンクロで頻出するのか。

そもそもの話になりますが、漢字ナンクロ黎明期の作家たちは熟語を探し続けました。辞書を引き、熟語辞典や索引を閲覧して、ひたすら使える・使えそうな熟語をリストアップする。それはそれは大変な作業(そして熱意)だったと推察します。

カナと比べると数は膨大、連結性(繋がりやすさ)は脆弱……それが漢字なのですから。1文字のみでも完結できる表意文字であり、意味深い……それが漢字。それらをクロスワードの世界に引っ張り込むには「剛腕」が必要だったというわけです。私自身は黎明期の少し後にこの世界に入ったので、この闇の深さと底を這いずり回ったわけではないのですが、ギリギリ、この「力業」と「無理矢理」を体感していると思います(先達はなんと偉大だったことでしょう!!)。

いまでは使用するのがためらわれる合成語もよく使われていましたし、それらは漢字パズルのルールを確定していく過程で淘汰されていきましたが、それまでの過程はワイルドでありアバウト。ある作家が新しい熟語を開発・使用すると(忸怩たる思いも含めて)他の作家がマネをする・パクることもよくありました。

編集部には読者から「こんな言葉あるのか?」という問い合わせが相次ぎ、編集側は「この辞書に載っています!」と強弁する。なので黎明期は、熟語の意味とか現代性とかは横に置いといて、「辞書に載っている」ということが大きな必然性を持ちました。そんな流れの中で、漢字パズルの作家・編集者・読者の間で共有できるデータベースのようなものが蓄積・更新されていく。ですので、作家によって、編集者によって、出版社によって、当時はかなり特色があったように思います。そして、それらがまた交わり、淘汰・蓄積・更新されていく……。

あ、また脱線してしまいました(笑)。超難問とはナニカ。表出しが少なければそれでイイノカ。面白く、魅力的でアルノカ。これは言うまでもなく、読者(解く側)の好みや漢字パズル歴に、かなり関係があると思います。

次号では、今回の試作パズルと、以前『ナンクロ漢字館』に掲載された同じサイズのパズルを使って、熟語数などを比較しつつ、さらに細かく検討していこうと思います。

(このコラムは、難問漢字館Vol.44に掲載されたものです)

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