パズル制作の裏側 第10話

【前回】パズル制作の裏側 第9話

前回予告した大マスの「金刀比羅宮」の話をする前に、大マスが「文字入り」か「文字なし」か、というスタイルについて、もう少しコメントしておきます。前号で提示した「遊」が大マスに入る3つのマス目は、とりあえず説明するために作成したものです。問題マスとして提示するなら、パズルとしては成立していません。
それを前提として今回は、前回提示した3つのマス目のうち、最初の1つを取り上げて、掘り下げてみましょう。

こちらが解答だとすると、問題マス目はこうなります。

大マスの問題にはこのように、大マスに文字の入ったパターンもあれば、次のようなものもあります。

言うまでもなく、ずいぶん違います。もともと小さな例題として作成した問題ですので、「西国」「四国」「憶合金」「本籍」「小切」「物体」の部分で文字のつながりが生じています。これらは雑誌に掲載するパズルとしてはあまり格好よくないと言えます。同時に、大マスに「遊」が入った問題マス目では「園遊会」「西遊」の部分でも文字のつながりが生じています。ですが、大マスが白マスであるほうでは大マス近辺では文字のつながりは生じていないことになります。
また、これは別の問題になりますが、「大」は「大本山」「巨大」「大切」でしか扱われていませんから、これもあまり適切なパターンとは言えません。さらに言えば、「見」は、「物見遊山」「手相見」と「下見」、「地」は「白地小切手」「本籍地」と「山地」「地下」、「山」は「物見遊山」「大本山」と「入山」「山地」という2カ所のみで使われており、文字の確定度は「記・形・手」に比べると低いとも言えます。
さらには、大マスが白マスの場合のマス目の「見」「山」においては、不確定度がより高まると言えます。ここでも大マスが「白マス」か「文字入り」かの違いが出てきます。つまり、大マスを白マスにするならば、大マスに関わらない部分で文字が確定できる熟語を使用しておかなければいけない、ということです。

次に、大マスに複数の文字が入るパターンを見てみましょう。

これはナンクロ漢字館88号のQ38の大マス近辺を抽出したものです。解答マス目は次のようになります。

 部分を切り取っているので変な風に途切れていますが、そこは御容赦を。
大マスに複数の文字が入っているスタイルの場合は、いずれかの文字が隣り合うマスとつながることになります。ここでは大マスは「金山」「一字千金」「一刀両断」「直間比率」「大宮人」「森羅万象」というかたちで外側のマス目とつながっています。
この場合、大マスに入っているうちのどれかが使われる、という問題になっていますので、大マスが白マスというかたちはほとんどありません。白い大マスには2文字(あるいは3文字・4文字)熟語が入る、などというパターンも一応可能なわけですが、文字の確定要素がかなり低くなるためにあまり採用されていないというのが現状です。

このコラムは、難問漢字館Vol.12に掲載されたものです。

【次回】パズル制作の裏側 第11話

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