パズル制作の裏側 第1話

 クロスワードパズルとは「言葉がマス目において交差しているパズル」という意味です。
英語圏が発祥の地であり、もともとアルファベットで作成されていて、日本ではカタカナが使用されていました。カギと呼ばれるヒントから言葉を類推し、マス目を埋めていく、というスタイルです。 しばらくして「同じ番号のマスには同じ文字が入る」というナンバークロスワードが誕生します。

 そして、漢字ナンクロの登場。ただ、その歴史はあまり古くありません。おそらく、30年弱ほどです。
アルファベットが26文字、カタカナが70文字程度なのに比べると、漢字の数はあまりにも膨大であり、文字としての性質があまりにも違っているので、かんたんに「漢字バージョン」ができるだろうと考えていた当時の方々はかなり苦労されたようです(逆にいえば、その苦難を乗り越えてこられた先人に敬意を表したいと思います)。

 アルファベットで表記される「MUSIC」は、カタカナでは「オンガク」、漢字では「音楽」です。「M」や「オ」と比べると、「音」が他の字とくっついて単語を形成できる文字としての展開力がいかに少ないか、想像できると思います。
加えて、漢字は少ない文字数で単語を形成できてしまうという性質を持ちます。これは一般的には便利な部分がありますが、マス目のなかに言葉を網羅させるというクロスワードパズルにおいては、実は、はなはだ不便な要素なのです。

 さて、ここでナンバークロスワードパズルのルールのおさらいを。
『同じ番号のマスには同じ文字が入る』
『マス目に入る言葉は基本的に一般名詞』
『使用する番号=文字は少なくとも2度以上、マス目に登場する』

 さらに、「解き方」には書いてないルールをいくつか。
『黒マスは並んではならない』
『「島」の禁止』

 そして、漢字ナンクロならではのルールとして、『表出し文字(ヒント文字)の設定』があります。

 ここでは、「島」について説明します。
「島」はある種の隠語のようなものですが、要するに、マス目は1つの世界であり、それは2つ以上に分割されてはならない、ということです。「島」の例をあげてみます。

●「島」のないマス目



●「島」があるマス目(3つに分割されている)



 アルファベットやカタカナでは「島」ができることなど、めったに起こりません(そもそもアルファベットでは「黒マスの連続」が違反でない場合もあります)。
ですが、単語を構成する文字数が少なくて済み、他の字とのくっつきやすさに欠ける文字=漢字においては、「島」はしばしば起きてしまう事態なのです。

●このコラムは、難問漢字館Vol.3に掲載されたものです。

【次回】パズル制作の裏側 第2話

ページトップへ戻る