パズル制作の裏側 第15話

【前回】パズル制作の裏側 第14話

 「ホワイトナンクロ」について、続き。「掟破り」みたいな強烈な言葉を使ったので、まずはそこから。
いささか不穏な言い方をしましたが「ホワイトナンクロには設定上、ある種のルール違反が含まれている」のです。どういうことか。「特定の文字には特定の数字のみが対応する」という、あれです。目次の裏にある「漢字ナンクロの解き方」をご覧ください。「6・光・1・媚」から「1=明」と推察し、さらなる展開で「2・紫・7・1」から「1=明」と確定しています。こうなったら「明はもう1以外の数字で現れることはない」というのがナンクロのルール。けれど、ホワイトナンクロの「黒マス」についてはこのルールが除外されているのです。なぜなら、たいていのホワイトナンクロでは複数の黒マスがチェック表の中に入るからです。
「特定の文字には特定の数字のみが対応する」というルールがなくなると大概の場合、ナンクロを解くことができなくなります。ただ、黒マスについては例外たりうる、と。それだけ黒マスは強烈なブツなのです。複数のチェック表に黒マスを対応させたとしても、最終的には確定できる。そもそもパズルにおいて「ピリオド=壁」として設定されたのが黒マスです。英語やカタカナでは黒マスをなくしてしまっては解くことは不可能、漢字ナンクロだからこそ可能になったこの荒業、それを掟破りと呼んだのです。
ちなみに、アルファベットは26文字・カタカナは71文字、このくらいの文字数だと組み合わせによる数は桁違い、文字の性質というのは面白いものです。ただ、カギ付きのクロスワードパズルでは黒マスを抜いた場合もたまにあります。その場合は「カギは語頭になる」というのが1つのヒントになっています。
そんな掟破りを実現したホワイトナンクロ、やはり掟破りのオモシロサを含んでいるのかもしれません。そのオモシロサの極意はなにかと言えば、ズバリ「黒マスの配置」ということになると思います。長い熟語やアクロバティックなマス目などを含む奇抜な「黒マスの配置」、それがホワイトナンクロの醍醐味です。
今回は試しにパズルを作成しながら考えてみましょう。「天文学的数字」というやや長めの熟語を頭に使ってみます。比較として「天文学者」頭に使ったマス目も併置します。

1つ長いのを置いてみると、かなりいろいろな展開ができそうですよね。「2」の3文字と4文字をベースにした階段型と比べると、かなり複雑なタイプのマス目を構成していけることがわかると思います。次回はもう少し、これらのマス目を展開していきます。

このコラムは、難問漢字館Vol.17に掲載されたものです。

【次回】パズル制作の裏側 第16話

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