パズル制作の裏側 第11話

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もう少しだけ「大マス入りナンクロ」について掘り下げてみます。

(私からすると、なんですが)ナンクロは言葉の選択とマス目の作り方、これに尽きます。もちろん、その前後と途中には幾多の創意と工夫が必要になるわけなのですけど。多少、内輪バラしネタ的になりますが、最初にナンクロ作成法を伝授してもらったときに(実は「伝授」はほぼ無理なのですが、文章の書き方の伝授が不可能とそれは似ています)「3字4字階段型」というのを教えてもらいました。3文字と4文字でブロックを作り、そのブロックを2文字の階段で連結させていく、というものです。具体的にいうと次のようなものになります。(※1)

ナンクロにおいて文字確定のためには3文字以上の言葉が2つ以上あることが基本的要件となります。この例でいえば「一」は「一期一会」「一世一代」「一大決心」「一人言」「一口大」によって確定、「大」は「一大決心」「大言壮語」「一口大」で確定、「期」は「一期一会」「決算期」「定期券」で確定、「会」は「一期一会」「国会議員」「壮行会」で確定、となります。一方「国」は使われている言葉は「国会議員」「外国」「一国」のみですので、確定できるとはいえません。ちょっと無理矢理になりますが「区会議員」「区外」「一区」などとも考えられるからです。3文字以上といっても合成語はあまり確定力を持たないのです。(例えば「焼肉定食」のみではどれも確定できませんよね。)

確定に役立つのは「3文字以上」ということで、それのみを抜き出したマス目はちなみに以下のようになります。(※2)

 するとほら、3文字と4文字のブロックが2文字の階段でつながっていることがわかりやすくなると思います。あと、言うまでもないですが、この状態では「行」は確定は不可能です。もちろん「人・水」も。

この「3字4字階段型」はナンクロを初めて作成してみようという人にはある種のお手本になるかと思います。もちろんその先には幾多の複雑でアクロバティックでスリリングなマス目が存在するわけですが、もっとも退屈かつ基本的なスタイルとして「3字4字階段型」はあります。
実は、マス目をより自由に展開できる要素を持つのが「スタンダード」なのです。そもそも「しりとりナンクロ」には厳密な意味でのマス目は存在しません。1行の長い列に区切りがある、というのがその実体ですから。(それ故に持つ面白さがあることはもちろんです。)そして、マス目の作成(黒マスの配置)において「阻害」となるのが大マスなのです。前々回の第9回で示したように、大マスにおける黒マスの配置にも基本パターンはあります。ですが(実際に大マスがあるマス目を作ってみればわかるのですが)大マスは偉大なる障害物としてマス目に変化を与えてくれるのです。それも2×2と3×3と4×4など、それぞれ使い方によって七変化するのも醍醐味です。プラス、3×4やその他もろもろ、幾多のバリエーションも。

黒マスの位置が伏せられているホワイトナンクロでは(長い言葉などを利用した)よりアクロバティックなマス目で楽しさを倍増できますし、黒マスの連続が許されているナンバースケルトンではナンクロでは不可能なマス目も実現できます。(ナンスケではその分「センス」みたいなものが必要になってくるのですが、それについてはナンスケを語るときに、また。)

作家によって得意不得意・好き嫌いもあるパズルの種類いろいろですが(読者の方ももちろん各々得意不得意・好き嫌いがあると推察いたします)、しりとり・大マスに続き、次回からは「リストもの」を取り上げてみたいと思います。実は、これにも種類が、いろいろとあるのです。

このコラムは、難問漢字館Vol.13に掲載されたものです。

【次回】パズル制作の裏側 第12話

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